「SOHO
AWARDS 2005」選考総評

選考委員長
労働研究家、山野美容芸術短期大学名誉教授 森 清
SOHO AWARDS 2005の選考委員を務めてほしいとの話があった。昨年の同賞選考委員賞の受賞者として、また日頃お世話になっている者としてお礼のつもりでお引き受けせねばと思った。
それだけでなく、SOHOについて思うことがあった。
ある「俊敏な」と評していい若手編集者と話していて「SOHO」と口にしたら、「それは何か」と聞かれた。発音が悪くてかと繰り返したら、言葉そのものを聞いたことがないようだった。少し説明すると、直ぐに記憶の底から掬い上げてくれたけれども、彼の世界では生きた言葉ではなくなっていたようだ。
第二、特に政治の世界でそうなのだが、少数派を切り捨てる傾向が著しい。これは、「自己責任」という言葉とセットになっているようだ。多数派の意見や生活に沿わずその人なりの生き方をし、考えを持つことはその人の勝手で、認めないわけではないけれども、その結果、何が生じても「俺たちは知らんぞ」というようだ。
SOHOという言葉がもてはやされていた頃は、SOHOに拠る人たちの社会的認知度が高かった。「新しい」、「かっこいい!!」姿をそこに見ていたようだ。憧れもあったか。しかし、その実態が厳しいものと知られるようになり、その実践にはかなりの勇気と努力が必要と分かって、SOHOは一部の人のものとなった。
しかし、その一方、一般企業には勤めたくないと思う若者が増え、力あり信念ある者の一部がNGOやNPOで働くようになった。その人々は、ビジネスそのものに距離をおく。かつての企業に疑念を持つ人々は、企業に群れることは嫌ったがビジネスそのものを忌避しようとはしなかった。未来型ビジネススタイルの開拓者としてSOHOを志すというところがあった。
いまSOHOに拠る人々は、そのあたりをいかが考えているか。SOHOという少数派はこの産業社会で必要不可欠であり、少数派を尊重することが民主主義の根本だと主張することに存在意義があるのではないか。
そのようなことを考えていて、このSOHO AWARDSという事業は、そのための重要な社会的広報活動ではないかと思ったのである。
昨年の選考委員会は、第一回ということもあり、その実行委員会が担ったそうだ。今回は、実行委員会は運営に当たり、選考委員会を設置して選考の公平さ、公正さを保とうということのようである。
賞の候補は推薦により、その候補を公開して評価投票を受ける方式は前年同様。候補点数は前年の54を上回る74であった。順調な発展か。
評価投票は9月末に締め切られ、選考委員会が10月5日に開かれた。選考基準は前年と同じく評価点を参考にしながら、選考決定は委員の討議によるとした。
先ず評価点の一位「Firefox」と二位「Sleipnir2」の同類候補をいかがするか。いずれもインターネットのヘビーユーザーであるSOHOが日頃活用していることで得た評価点を重視し、しかもそれぞれの利用者が熱心に順位を競い合ったらしい状況が事務局から報告され、金賞は二つと決定した。
銀賞は「mixi」と「インフォアクシア」になった。mixiはソーシャルネットワークの国内最大。金賞2点の情報もこのネットワークで話題にされ、それが評価点の増加に寄与したそうだ。インフォアクシアはwebアクセンビリティ・ポータルサイトの第一人者と評され、その評判に値する内容が今後の普及を予測させるとして選ばれた。
銅賞は5点。「skype」は、地域を選ばない無料通話サービスで評判。一般の電話にも利用しやすい料金でつながるという。「シリコンカフェ」は、森川眞行氏がSOHO開拓期から独力で活動してきた成果が買われての個人としての初受賞。「beat」は最重要なコミュニケーション環境の構築からセキュリティまでの質の高いサービスが評価された。「Ivy
SOHO」は長年のSOHO支援セミナーサービスとそれによる人脈効果が高く支持された。「運の良いオトナ養成講座」は、忙中の閑を提供して異色。受賞もそれにならって遊び心からか。めでたし。
選考委員賞は、以上に入らなかった中から、各委員の興味と見識で推されたものを議論して決めた。バラエティに富む5点が受賞した。書籍が一点入った。個人的には異見を持つけれども、基本図書の一冊としては良書であろう。
今回の受賞は、結果として「コミュニケーション」に収斂したと言えよう。選考委員会が意識しての誘導ではないが、現在のSOHOが実際に活用し、将来的に向上してほしいアイテムが選ばれてそのようになったということであろう。
これは、現在のSOHOは「コミュニケーションの充実」を期待していることを示したとも言え、今後のSOHO環境整備で参考にしてほしい。
しかし、コミュニケーションの基盤である哲学、理念についての関心も高まる必要がある。来年度には、そのような方向での活動、思想についての指導的な候補が推薦されることを期待したいというのが個人的な思いだ。
いずれにしろ、候補それぞれに力あり、いわゆる甲乙つけがたしの常套句通りであった。来年度以降、それらの中に受賞が出るかもしれない。今後ともの精進を望んでおこう。
また、各位、各社のこの事業へのご支持に厚く感謝しながら、更なるご協力をお願いしておく。